一昨年春、文化系同好会として「観光ホスピタリティ研究会」が発足しました。国際級ホテルを中心とした観光ホスピタリティ関連施設を訪問し、現地スタッフと交流することを主な目的としています。

 本ホームページにてご報告しましたように、昨年は「ホテルオークラ神戸」を訪問しました。今回は同じく関西屈指の名門ホテルである「ホテルオークラ京都」を、2月6日に国際観光学科長谷川セミナー生を主体とした学生10名と引率教員1名(筆者)で訪れました。

 「ホテルオークラ京都」は地下鉄東西線「京都市役所前駅」に直結した京都の中心に位置します。その前身である「京都常盤」の誕生は1888年に遡ります。これはわが国の西洋式ホテルの黎明期のことです。その後、名称の変更、改築等はありましたが、130年以上にわたり、地元関西の顧客、国内外の賓客(VIP)から愛され続けた老舗の名門です。館内は京都の伝統的な風情とともに、ヨーロピアンテイストも調和させ、訪れる人に安心感とやすらぎをもたらします。客室は設えも素晴らしいだけでなく、京都の街並みや山々の眺望も楽しめます。飲食施設は和・洋・中、バラエティ豊富で、いずれも世界の食通を満足させる高いレベルにあります。会議場、宴会場も充実しており、婚礼会場としても人気を誇っています。

 今回は学生の希望で本格的フランス料理のフルコースを、食事作法解説付きで楽しむことになりました。その後、客室、各レストラン、会議場(宴会場)、婚礼施設などをご案内いただきました。

 個人的には学生には、和食の食事作法についても学んでほしいと思いましたが、学生の意見として、「まずはフランス料理から実施したい」ということで、その希望通りに行いました。

 なお、現在世界の人々がフランス料理を堪能できるのは、フランス料理界の巨星で、ロンドンの世界的な著名ホテル「ザ・サヴォイ」(1889年開業)、「クラリッジス」(1856年開業)の総料理長などを歴任したオーギュスト・エスコフィエによる、フランス料理の革新のおかげであることはよく知られています。「ホテルオークラ京都」もこのエスコフィエが体系づけ、現在も連綿と続く正統派フランス料理を提供しています。これは「ホテルオークラ東京」「ホテルオークラ神戸」など、ホテルオークラグループの共通の特長でもあります。

 お食事の会場はホテルの特別なご配慮で、「貴賓室 エディンバラ」をご用意いただきました。貴賓室は当ホテルでこの一室のみで、もちろん我々の貸し切りでした。ホテルの公式ホームページによりますと、この「貴賓室 エディンバラ」は国内外の賓客(VIP)をもてなしてきた特別なお部屋とのことです。実際に絨毯は非常に毛足が長く、一歩そこに足を踏み入れただけで特別な感覚に浸ることができます。

 食事に先立ち、当ホテルの総支配人後藤浩之様、取締役総料理長中田肇様、総務人事部付部長増尾善彦様、宿泊部フロント課長佐々木一政様、料飲部宴会サービス課長前田和孝様、宴会予約課グループリーダー井上進様からご挨拶いただきました。

 後藤総支配人は筆者の「ホテルオークラ東京」在籍時の4年ほど後輩にあたります。筆者は「ホテルオークラ東京」入社して5年目に上記の「ザ・サヴォイ」「クラリッジス」を含めた「サヴォイ・グループ」(当時)へ1年間出向したのち、「ホテルオークラ東京」のフロントに復職しましたが、後藤総支配人はその時は新人のベルパーソンでした。つまり、同じホテルのロビーでともに働いた仲間です。なお、後藤総支配人は当時からたいへん爽やかな好青年で、現在のご活躍が予見できました。中田総料理長は筆者が「ホテルオークラ東京」の2年目にレストラン「カメリアコーナー」(当時)に在籍した際、その調理部で勤務なさっていました。30数年前とはいえ、いずれも縁の深い方々です。

 佐々木課長には食事の後、館内見学をご担当いただきました。前田課長には食事作法講習の講師役をご担当いただきました。井上様には今回の食事会の予約、段取り一切をご担当いただきました。また、食事会後の館内見学を佐々木課長とともにご担当いただきました。

 食事作法やホテルの概要については訪問前に数時間かけて予習を行いました。その成果もあり、学生は初めこそ緊張していましたが、すぐに雰囲気にも慣れはじめ、前田課長のわかりやすい解説とともに食事を堪能しました。食事の内容については期待していた以上に美味しく、なかでもローストポークは学生から「これまで食べた豚肉料理のなかで一番美味しい」などと、たいへん好評でした。

 食事後には上述の通り、佐々木課長と井上様の2班に分かれ館内をご案内いただきました。客室は特別にスイートルームも拝見させていただきました。リビングルームは広大で、リビングスペースに加え、ダイニングスペースもあり、立派なバーカウンターも設置されていました。学生は皆感嘆していました。

 その後も、各レストラン、会議場(宴会場)、婚礼施設など館内をくまなくご案内いただきましたが、特に学生の関心の高いチャペルは時間をかけてご説明賜りました。そこではいくつもの照明・音響の調整が可能です。それによりたいへんドラマチックな演出が施されますが、それをたいへん丁寧に実演していただきました。学生は皆感動していました。

 その他、学生からの数々の質問に対しても、たいへん優しくお答えいただきました。学生は皆大満足のなかで研修は終了しました。

 学生からのコメントを以下に紹介させていただきます。紙数の関係でここでは3名分をご紹介します。

【野条朋生さん】 (国際観光学科 3年)
「大学に入学して以来、コロナ禍で自粛が続き、本格的にホテルを訪問して研修する機会がありませんでした。これが私たちにとってほぼ初めての経験となりました。それで緊張している学生もいましたが、スタッフの皆さんは優しい笑顔でとても温かく迎えてくださいました。前田様から食事作法(テーブルマナー)について詳しく教えていただき、たいへん勉強になりました。お料理もとても美味しかったです。お食事を提供する際に大事にしていることとして、かすかに自分の存在を知ってもらうために、『恐れ入ります』などの声かけやお客様の見える位置からお料理を置くなど、様々な工夫がされていることを知りました。ホテル業界を目指す私たちにとってホテルオークラ京都さんで学べたことは忘れられない思い出になりました。このような機会を作っていただいた先生はじめ関係の皆様に深く感謝します。」

【和久田輝流さん】 (国際観光学科 3年)
「スタッフの皆様の優しいおもてなしで緊張がほぐれ、楽しくフィールドワークをさせていただくことができました。アイコンタクトしつつ笑顔でお話しするのがコミュニケーションを取る上で非常に重要であることを改めて実感できました。そして館内見学の中で、プレジデンシャルスイートも見学させていただきました。ブライズルームとしての機能も兼ねていることをご説明いただきました。室内に設置されている姿見に角度が付けられていたこと、特別な照明器具が設置されていることが印象的でした。さらに、客室やエレベーターホールにはスタッフの方によって一つひとつ丁寧に作られた折り紙が飾られており、そこからもホテルのおもてなしの素晴らしさを体験することができました。ホテルに就職することを目指している私たちにとって、とても貴重な経験になりました。後藤総支配人はじめ、フィールドワークにご協力いただいた全てのスタッフの方々にたいへん感謝しています。」

【上野愛子さん】 (国際観光学科 2年)
「今回のフィールドワークでは、貴重な体験を沢山することができました。まず超一流ホテルの貴賓室でフルコースをいただくという、最高のおもてなしを体験できたことはたいへん素晴らしい機会でした。高校や大学などで食事作法(テーブルマナー)を実施している学校はいくつかあるようですが、ホテルオークラ京都さんの貴賓室という特別な場所で学べたことは、今後どこへ行っても胸を張って伝えられます。たいへん嬉しく感じました。
今回の食事会では、後藤総支配人、中田総料理長はじめ幹部の方がお越しくださりとても感激しました。さらにスタッフの方のサーブの仕方、言葉遣い、笑顔の向け方、細かな気遣いなどを目の当たりにすることができ、たいへん勉強になりました。館内見学では、滅多に入ることのできないスイートにもご案内いただきました。その際に、日々の業務のエピソードや現場で働く方の生の声もお聞きすることができました。さらに案内して下さったスタッフの方の表情や質問に対する対応力などあらゆることが学びでした。 また、フロントのスタッフのみならず、タクシー乗り場などのあらゆる場所でのスタッフの対応も本当に素晴らしいものでした。自分の持ち場において、一人ひとりがホテルオークラ京都さんで働いていることにプライドをもって仕事をされている熱意を感じました。これらがホテルオークラ京都さんが長年愛される理由なのだと感じました。来年度からは長谷川セミナーに入り、そこでホテルをはじめとするホスピタリティビジネスについて研究します。卒業後は今回出会ったスタッフの皆様のように、ホスピタリティ精神に溢れた人になりたいです。今回は私のモチベーションをとても高めてくれる素晴らしい機会となりました。深く感謝しています。」

 研修終了後、「ホテルオークラ神戸」の訪問時と同様に、学生からホテルに心を込めたお礼状をお送りしました。学生と一緒に撮らせていただいたお写真も同封するよう指導しました。学生にとってはこれらも大切な学びとなります。

 ホテル側からもたいへんありがたいことに、我々に対して良い評価を頂戴することができました。以下、一部抜粋して紹介させていただきます。

 「学生皆様の姿勢にとても感銘を受け、長谷川様の日ごろの学生との関係性、取り組みが非常に有意義なものだと感じ取れました。皆様と交えた時間を光栄に、私も日々精進して参ります。」(前田課長)

 「写真も同封いただいており小生にとっても良い思い出となりますので大切にさせていただきます。また、拝読させていただきましたお手紙の内容や書式につきましても、しっかりとマナーが守られており、申し分ない内容でありました。学生の皆様には将来において是非グローバルにご活躍される事を心より願っております。」(佐々木課長)

 「皆様に積極的にご質問いただき、ホテルスタッフも改めて学べることが多く貴重なお時間を過ごさせていただきました。学生の皆様にまた機会がございましたら、お客様として、または当ホテルのスタッフとしてお会いできますことを楽しみにお待ちしております。」(井上様)

 筆者からもあらためて、「こちらこそたいへん光栄です。学生ともども深く感謝しております。これをご縁に末永くご指導賜りたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。」旨、御礼を申し上げました。

 以上ご報告させていただきます。これからも状況が許せばこのような活動を続けたいと考えています。皆様方のご理解とご協力を賜れましたらとても幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(文責 国際観光学科 教授 長谷川順一郎)

【写真】

今回は特別に「貴賓室 エディンバラ」にて、フランス料理のフルコースを頂戴しました。絨毯、シャンデリア、調度品、全てが厳選されたものばかりで、まさに特別な空間でした。

宴会サービス課の前田和孝課長からフランス料理の食事作法について解説いただきました。たいへんわかりやすいお話で学生の理解も深まりました。

お料理はいずれも絶品でした。「さすが」というべき内容でした。特に学生から好評だったのがこのローストポークでした。

特別にスイートルームもご案内いただきました。その広大さ、豪華な設えに学生は皆感激していました。なお、画面奥にベッドルーム、浴室などがあり、画面手前右がバーカウンターです。

スイートルームにて、フロント課の佐々木課長とともに。佐々木課長のお話もとてもわかりやすく、学生から「たいへん勉強になった」旨の感想が寄せられました。

婚礼施設も時間をかけてご案内いただきました。こちらは館内のチャペル「セントジョーンズ・チャペル」(写真出典: ホテルオークラ京都公式ホームページ)。

「セントジョーンズ・チャペル」にて、宴会予約課井上進様から照明・音響なども含めてご丁寧にご説明いただきました。なお、井上様には今回の研修の段取りをしていただきました。深く感謝申し上げます。

井上様のお計らいで実際にチャペルに着席させていただきました。素晴らしい施設に歓声がわき、自然と笑みがこぼれました。