心理コミュニケーション学科:3泊4日の韓国ソウル研修を実施!
Date.
16/09/28
心理コミュニケーション学科では、2016年9月5日から9月8日にかけて、3泊4日の韓国ソウル研修を実施しました。参加した5名の学生は韓国社会を実地に見聞し、現地での学習プログラムを通じて異文化コミュニケーションを体験的に学びました。研修では、以下のプログラムを実施しました。
①スモール・ビジネスのコミュニケーション調査
屋台がひしめく広蔵市場、漢方薬を中心に青果・鮮魚・乾物と何でも揃う京東市場を訪れ、小商店や露天商における店主と客とのコミュニケーションを探りました。地元の住民が屋台で飲み食いし、祖先を祀るチュソクのための膨大な買い物をする市場の活気は、外国人観光客でにぎわう明洞の免税店のにぎわいとは対称的でしたが、消費の欲望が渦巻く場としては共通していて、その両極の間にグローバル都市ソウルが姿を現したようにも感じられました。学生たちは、屋台で豚の腸詰や臓物の煮込みなど庶民的な料理に舌鼓を打ち、食を通じた異文化コミュニケーションを楽しみました。
②自主管理の研究スペースの見学と交流
弘大入口駅から徒歩十数分の雑居ビルの4階と5階に位置する自主管理の研究空間「スユノモN」を訪ね、施設の見学と交流をおこないました。スユノモNは、主に人文学を学ぶ人たちが会費制で運営し、セミナーや市民講座を開くとともに、当番制で食事を作り、一緒にご飯を食べながら勉強するという、生活と研究の共同性を追求する研究コミューンです。ここでベジタリアン食を共にしながら、お互いの自己紹介にはじまり、日本と韓国の恋愛・結婚観や、就職活動、悪口の比較文化論など、様々な話題で盛り上がりました。夕食後、研究室を出てホンデの繁華街を案内してもらいました。近くの鉄道跡地を再開発した公園を訪れると、多くの若者たちがコンビニエンスストアで買ってきたマッコリやビールを飲んでいました。最近の学生は経済的に厳しく居酒屋ではなく公園飲みをするそうです。
③公共空間で表現する社会運動の調査
ソウルでは様々な団体が路上を占拠し、社会運動のメッセージを発信している現場に出くわします。地下鉄光化門駅の地下通路では、全国障がい者差別撤廃連帯のテントが1,000日以上も座り込みを続けています。人間の権利の保障を求める障がい者運動で、きっかけとなったのは深夜の火災による事故でした。テントの前には事故で亡くなった方々の遺影が置かれていますが、座り込みを続ける間にも遺影の数が増え、人権の保障を求める闘いの切実さが痛感されました。光化門の地上に出ると、広場では2年前のフェリー沈没事故の犠牲者遺族たちが政府に対して真相の究明と責任の追及を要求する座り込みを続けています。遺族たちにとって事故はまだ終わっていません。ちょうど追悼行事がおこなわれていて、遺族が切実に訴える声の響きは言葉は分からずとも学生たちにも届いたようです。
④博物館での歴史と文化の学習
西大門刑務所博物館を訪れ、韓国の近現代史を学習しました。植民地時代の建物を活用した展示は生々しく、事前研修で韓国史を学んでいたのでよりいっそう理解が深まりました。西大門刑務所博物館の向かい側のオクパラジ通りは再開発のための取り壊しが進み、虜囚への差し入れのための宿屋が並んだ歴史ある路地の面影は消え、高層アパートの建設が迫っています。古びた路地と近代的な高層建築の対比がソウルの風景を印象的なものにしていますが、しだいに路地は消えゆく運命にあるのかもしれません。さらに、ミュージアム、デザインラボ、ホール、マーケットを備えたデザインの新しい総合拠点となる東大門デザインプラザ(DDP)を訪れ、ソウルの最先端の文化にも触れました。DDPは壮大なザハ・ハディド建築で知られ、流線形で構成された巨大建造物に圧倒されながら、所々に置かれた椅子やベンチがどれも不揃いのデザインで、必ずしも座りやすい形状でもないことに気づき、「これって一号館の椅子に似てるかも」と、デザインの最先端が通じ合っていることを発見できました。
⑤都市文化のフィールドワーク
中国語と日本語での客引きの声が飛び交う明洞の繁華街では、観光都市としての活気を感じました。同じ繁華街でも、ホンデや新村の学生街では、地元の大学生のストリート感覚が溢れ、グラフィティ(壁面の落書き)のクオリティも高く、日本のサブカルチャーをあつかうショップもあちこちに見られました。地元の住民が利用する市場では、狭いスペースに過密に商品を重ねて物量感を押し出す陳列が印象的。庶民が集う韓国式サウナのチンジルバンは、汗を流し、垢スリ、マッサージに、食事もできて半日楽しめる健康ランド。風呂場のマナーも日本と異なり、浴槽で泳ぐアジョシ(おじさん)もよく見かけます。日本と似ていてちょっとずつ異なる韓国文化は、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、均一ショップの商品にも見られ、街を歩くだけで異文化を楽しむことができました。
参加した学生たちが異国の地で自分が「外国人」になる、という経験をしたことはとても大事で、日本で留学生や外国人観光客に接するときの接し方にも刺激を与えるはずです。「外国人」であることの不安と心細さ。それゆえに親切にされると何倍もうれしい。異文化なので、なじめないことや理解できないこともありますが、差異を拒絶の根拠とするのではなく、差異を楽しみさらなるコミュニケーションを接続していくことにこそ、異文化コミュニケーションの喜びがあります。心理コミュニケーション学科では、海外研修を通じたチャレンジを応援しています。(担当教員:渡邊太)